弥生美術館(文京区)で開催中の「耽美・華麗・悪魔主義 谷崎潤一郎文学の着物を見る ~アンティーク着物と挿絵の饗宴~」を見に行ってきました。
文豪・谷崎潤一郎は小説の中で、女性の風貌等とともに、着物も実に細かく描写しています。谷崎の着物への強いこだわりを取り出して視覚化したのがこの企画展です。
下記代表作を中心とした20余りの作品が取り上げられていました。
- 細雪(ささめゆき)
- 痴人の愛(ちじんのあい)
- 春琴抄(しゅんきんしょう)
- 猫と庄造と二人のをんな
- 蓼喰う虫(たでくうむし)
- 秘密
よみがえった細雪の世界
「細雪」に登場する蒔岡家の美人四姉妹のモデルが谷崎の三番目の妻・松子夫人と彼女の姉妹であったことは有名です。
会場に入って最初に展示してあったのが、昭和15年に平安神宮で谷崎によって撮影された細雪のモデルたちの写真です。次に、彼女らがまとう着物のコーディネートがアンティーク着物によって再現されているの見ることができます。しかし小説の花見のシーンを読んで受けた印象より正直地味な印象を受けました。
経年によってアンティーク着物の色が変わっているのかもしれないし、谷崎の筆致がそれだけ着物を魅力的に描写しているのかもしれません。
アンティーク着物
私は同世代の中では比較的着物を着る方だと思うのですが、アンティーク着物には詳しくなかったので間近に見ることができて新鮮でした。
今回の展覧会では着物の生地に実際に触ることのできるコーナーがありました。銘仙やジョーゼット等の着物がかけてあり、「痴人の愛」のナオミや「細雪」の雪子が着ていたジョーゼットの着物はこんな肌触りなのかと、想像しながら触らせてもらいました。
実際のアンティーク着物を見てとにかく吃驚したのが、当時の女性がいかに華奢であったかということです。
丈も裄の長さもまるで少女用の様ですが色柄は成人女性のそれで、不思議な印象を受けました。また古い写真を見ると皆さん見事な撫で肩です。ショルダーバッグなんて使えないんじゃないだろうか…現代の日本女性に撫で肩が減ったのは食習慣や体の動かし方が変わったせいなのでしょうか。それとも洋服に合わせて体型が変化したのでしょうか。
展覧会は6月26日(日)までですので、足を運んでみてはいかがでしょうか。