江戸好みと京好み


東日本と西日本では売れる化粧品の色が違うそうです。端的に言えば、西日本の方が女性らしい色・華やかな色が好まれるそうです。

着物の趣味もやはり東日本と西日本では今でも異なります。メディアや交通の発達していない頃は、もっと大きな違いがあったと思われます。

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弥生美術館で開催中の「耽美・華麗・悪魔主義 谷崎潤一郎文学の着物を見る ~アンティーク着物と挿絵の饗宴~」でも、東西の趣味の違いを感じました。

ざっくり言うと、粋で洗練された江戸好み(東)と華やかで女性らしい京好み(西)です。

松子夫人は谷崎の三番目の妻であり美のミューズであり、「細雪」の幸子のモデルです。

松子夫人は大阪船場出身の「御寮人」ですし、震災後、日本の美に傾倒した谷崎の影響もあるのでしょうか。彼女が実際に来ていた着物をイメージして展示されているものは柄が大きく華やかな西日本風のものでした。

展示会には写真に凝っていた谷崎による矢絣(やがすり)の着物を纏った松子夫人の写真がありますが、大柄な矢絣(やがすり)の着物を着ています。女らしさ、色っぽさを感じる姿でした。

また、再現された蒔岡四姉妹の着物も、雪子は純和風、妙子は西洋趣味、幸子は和洋折衷というように個性が分かれていますが、三人ともどこかフェミニンで華やかな印象を受けるコーディネートです。

東京・横浜を主な舞台にした「痴人の愛」のナオミは東京の下町の生まれです。展示会で見た彼女の着物は、江戸の粋より西洋趣味や前衛趣味が優っている感がありましたが、作中で江戸っ子たるもの履物にはこらねばならないという「粋」を見せます。

着物を見ていると各ヒロインの性格や生育環境についての想像が止まりませんでした。

【編集後記】

今日のブログのタイトルは世界文化社の雑誌『きものSalon』’11-’12 秋冬号の特集「江戸好み。京好み。」から。

この号には松子夫人による彼女の着物の趣味に関する言葉が引用されていたと記憶しています。また故・池田重子先生が「江戸の粋」について文章を寄せられていました。

断捨離に凝っていた時に恐らく処分してしまいました。勿体なかったと思います。後悔先に立たずとはこのことですね。

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