江戸初期のファッションと出版


東福門院和子のファッションについて調べていて、女院が贔屓にしていた高級呉服商・雁金屋が残している「御畫帳」や「御絵帳」等というものが印象に残りました。

上流階級の為の衣装図案帳

「御畫帳」や「御絵帳」は雁金屋の衣装図案帳で、一部が現代まで伝わっています。

現存する大部分の資料は京都国立博物館と大阪市立美術館に所蔵されているそうです。

大阪市立美術館にある資料は三冊にまとめられており、一番古いものが万治4(1661)年正月の年紀と「御畫帳」の標題があるそうです。

注文主として、東福門院だけでなく息女の昭子内親王と賀子内親王のお名前も残っています。

富裕層の為の小袖雛形本

これより時代が下った寛文6年には初めての小袖雛形本である『御ひいなかた』が刊行されます。

小袖雛形本とは染めた着物の布の見本帳です。常連客はこの見本帳から好みの柄を選んで着物を誂えました。

雁金屋の「御畫帳」や「御絵帳」といった衣装図案帳が東福門院やその息女といった超上流階級の特定の注文主の御用を控えたものに対し、小袖雛形本は不特定多数の富裕層を対象に作成・出版されたものでした。

この現象の背景には、

  • 町人層の経済的台頭
  • 出版技術・流通網の隆盛

が、あったと思われます。

小袖雛形本はこの『御ひいなかた』を嚆矢として19世紀初頭にかけて170〜180種もの膨大な量が刊行されました。

ファッションというと、どうしても色柄に目がいってしまいますが、ファッションの変化は政治経済の変化と密接に関わっているのが感じられとても興味深いです。

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