Kawaiiと琳派


「Kawaii」と「和の美」について考えていたらいろいろと興味深かったので、『かわいい琳派』(三戸信惠著)を買ってみました。

著者は山種美術館の特別研究員で先日のブログで取り上げた「Kawaii日本美術−若冲・栖鳳・松園から熊谷守一まで−」の企画をされた方だそうです。

有名な作品が取り上げられているので、絵は既に持っている図録などに収められていることもありましたが、解説の文章が詳しく、頷きながら読み、納得がいくものでしたので購入してよかったなと思いました。

「Kawaii」と20世紀初頭の琳派ブーム

本の最初の方に、現代の「Kawaii」ポップカルチャーを取り巻く社会現象と琳派の20世紀初頭のブームの共通点を挙げられていたのが興味深かったです。

「Kawaii」ポップカルチャー(ゲーム・アニメ・キャラクター等)は低俗な、あるいは一部のマニア向けの娯楽という位置づけでしたが、海外での評価により日本人自身が「クール・ジャパン」を標榜するようになり、広く海外でも通用する優秀なコンテンツ、あるいはアートとみなされるようになりました。

20世紀初頭はまだ「琳派」という呼び方もなかったようですが、今でいう琳派に注目した展覧会や出版がにわかに増え始め、一種のブームになったそうです。

ブームの要因は装飾芸術を志向するアール・ヌーヴォーが盛り上がりを見せていたヨーロッパで装飾の極ともいうべき琳派の造形に感心がよせられたから、そしてそれに日本人が気づいたからです。

20世紀初頭といえば、日本人が国をあげて西洋文化を取り入れていた時期です。現代日本人が自分たちの文化が西洋社会に評価された時に感じるものより、はるかに大きな衝撃があったと思います。

海外の評価

海外で評価されることにより国内での評価が一転するという現象に、少々複雑な気もしますが、やはり自分の身の回りにあって当たり前のものは、えてして評価が低くなりがちなのかもしれません。

記憶に新しいところでは「初音ミク」を思い出します。

「大人」の受けが必ずしも良くなかったと記憶している「初音ミク」ですが、生みの親・伊藤博之さんは、日本文化を海外に発信する「クールジャパン」に貢献したことが評価され、藍綬褒章を受賞されました。

ましてや「Kawaii」ポップカルチャーも琳派も「かわいい」ものです。(琳派がどう「かわいい」のかは今後取り上げたいと思います。)

「かわいい」と人に感じさせる要素を挙げることは可能ですが、「かわいい」は美の概念の中で比較的、権威や権力とは離れている概念であり、極めて主観的な表現だと思います。

何を「かわいい」と思うかは人によって異なり、また何故「かわいい」と思うかも非常に言語化しにくい。言語化しにくいということは文化的背景が異なる人には(たとえ同じ言語を使用していたとしても)魅力を説明しにくいということです。

それに対して「海外で評価」というのは、魅力の測り方として非常にわかりやすく、エビデンスとして魅力的な現象なのだと思います。

とはいえ、海外の方が目を留めるのは、目を留める時点で「Kawaii」ポップカルチャーにも琳派にも文化的厚みがあったからだと思います。

時間をかけて文化的厚みを創り上げたのは日本人自身なのですから、そこは誇りを持って良いのではないかと思うのです。

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