広重ビビッドとゴッホ


六本木のサントリー美術館で開催されていた「原安三郎コレクション 広重ビビッド」に行ってきました。会期は6月12日(日)迄でしたので既に終了しています。

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原安三郎コレクション 広重ビビッド

今回の展示は日本財界の重鎮であった原安三郎氏の蒐集した浮世絵コレクションのうち、次の2シリーズが中心でした。

  • 〈名所江戸百景(めいしょえどひゃっけい)〉

江戸名所を題材とした歌川広重最晩年の代表作

  • 〈六十余州名所図会(ろくじゅうよしゅうめいしょずえ)〉

五畿七道(ごきしちどう)の68ヶ国の名所を題材とした作品群

展示品を目にして衝撃だったことは、その繊細な線や鮮やかな色彩でした。

今回の展示品は、貴重な「初摺(しょずり)」のなかでもとくに早い時期のものだそうです。

そのため広重が表現しようとした形や、生涯を通じて追い求めた色彩および彫摺技法の粋を見ることができるとのことです。それに加え保存状態が極めて優れているため、退色のない摺りたての姿が鑑賞することができます。

原安三郎コレクションの浮世絵を見ると、自分が今まで浮世絵だと思っていたものは、決してべストの状態の浮世絵ではなかったのだと感じました。おそらく、摺りの手数を簡略化した「後摺(あとずり)」のものであったり、保存状態が悪いものを目にしていたのだと思います。もしくは画集やTVを通して見るため繊細な線を見ることができていなかったと思われます。

浮世絵とゴッホ

オランダの画家・フィンセント・ファン・ゴッホは浮世絵から多大な影響を受けていることで有名です。例えば今回展示された〈名所江戸百景〉の《大はしあたけの夕立》と《亀戸梅屋舗(かめいどうめやしき)》を模写した油彩画を描いたり、人物画の背景に広重のものを含めた複数の浮世絵が描かれていたりします。また、ゴッホは浮世絵を通して知った日本の風景や色彩に憧れ、南仏アルルに転居したとされています。

私は、そのゴッホのエピソードを聞いて、正直何故そんなに浮世絵に影響を受けるのか不思議に思っていました。

浮世絵の題材や構図は西洋の伝統にはないものですが、色彩に関しては納得できていませんでした。

しかし今回、私が今まで「浮世絵」だと思って見てきたものはベストの状態の浮世絵ではなかったから、ゴッホや他の西洋の画家たちの浮世絵への傾倒を理解できなかったのではないかと感じました。

ゴッホと広重は生きている時代が重なっています。今回展示されたものに近いものをゴッホが目にしていたとしたら、心が動かされるも当然だと思います。

【編集後記】

本物を見るのというのはコストがかかりますし、TVや本を通して学べることも沢山あると思います。ですが、やはり本物を目の前にすることでしか得られないこともあると思います。

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