雪の文様 視覚で涼をとる


今日もとても暑かったですね。

あまりにも暑いので、視覚から涼を得ようとパソコンのデスクトップテーマをマイクロソフト社が提供している「雪の結晶と霜」に変更してみました。

視覚からの情報は体感温度にとても影響があり、一説にはインテリアを寒色系の色でまとめると体感温度が3℃下がるそうです。

PCを見ると雪の結晶や霜の涼しげな写真が目に入ってくるので、心なしか涼しくなった気がします。

雪輪文様

和の伝統的な文様の一つに「雪輪文様」というものがあります。

雪の結晶の形からできた文様で輪花状の円に幾つかの小さな切れ込みが入った形です。切れ込みの数は明確に決まっているわけではなく、まちまちです。

雪をモチーフにした文様ですので冬に使用されますが、涼しさを呼ぶ文様として現代でも人気があるらしく夏の着物や帯にも良く使われています。

例えば浴衣の老舗・竺仙さんのHPをみましたら、2016年の新作として雪輪に秋草の柄が発表されていました。また、2015年の人気ランキング第8位は大きな雪輪の柄を紺と水色のぼかしで染めたものでした。

江戸時代の夏の着物や浴衣には、雪の文様など冬を連想させるモチーフをあらわしたものがあり、文様によって視覚的に涼を取ることを日本人は昔からしてきたんですね。

雪輪文様の由来

本やHPによっては「雪輪文様は雪の結晶を文様化したもの」とされているのですが、これはちょっと違うのではないかなあと思います。

何故なら、雪輪文様は安土桃山時代の能装束などに見ることができますが、日本で雪の結晶の形が認識されたのは江戸後期だからです。

江戸末期の下総国古河(現在の茨城県古河市)には「雪の殿様」と呼ばれるお殿様がいました。下総国古河の藩主・土井大炊頭利位(どいおおいのかみとしつら)です。
利位は幕府の要職を歴任する傍ら、20年にわたり雪の結晶を観察し「雪華(せっか)」と名付け、その成果である86種の結晶スケッチを収録する『雪華図説』を刊行しました。

観察は顕微鏡を用いて行われたそうで、『雪華図説』に描かれている雪の結晶の形状は現代の私たちが写真などで見る拡大された雪の結晶とほぼ同じです。

『雪華図説』に掲載されている結晶図をもとにした雪華文様が庶民の間で大流行し、着物の柄や漆器などの工芸品などに使用されました。
現在残っている錦絵にも着物の柄に「雪華文様」を用いたものが多数あるそうです。錦絵で描かれている着物の模様を確認してみましたが、雪華文様は具体的な雪の結晶の形をしており、抽象的な雪輪文様とは全くことなっていました。

顕微鏡などの拡大する道具ができて初めて雪の結晶がとらえられるのであり、雪輪文様の由来が雪の結晶であるというのは無理があると思うのです。

雪輪文様の由来にはいろいろな説があり、確定はしていないようです。

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