お辞儀は難しい 知っていることと出来ていること


大宗匠(茶道裏千家の前のお家元)の本を読んでいたら、「お辞儀」について書かれていて、いろいろと考えてしまいました。

気持ちの伝わるお辞儀

日本で暮らしていると、茶道等にかかわりがなくてもお辞儀とは無縁ではいられないですよね。

大宗匠は書かれます。「最近、とても気になる所作があります。両手を重ねておへそのあたりに置き、ひじを張ったままの姿勢で頭を下げて『いらっしゃいませ』『有り難うございました』と挨拶をする。デパートや機内でよく見かけるあのお辞儀が、私は大嫌いです。おへその上に手を置く姿を見るたびに、お腹が痛いのか、それとも何か大切なものを服の下に隠しているのかと、いぶかってしまいます。」

歓迎とお礼の気持ちがちっとも伝わってこない、とおっしゃるのです。

「お腹が痛いのか」というところでクスリとしてしまったのですが、果たして自分のお辞儀からは気持ちが伝わっているのだろうかと考えると、背筋が寒くなりました。

知っていることと出来ていること

「礼に始まり礼に終わる」という言葉があるように、お辞儀は日本のマナーの基本です。なのですが、どんな分野でも基本をきちんとやることは本当に本当に難しいと常日頃感じます。

心がこもっていても、間違ったやり方では相手の心に響かないと本にはあります。

茶道では「真」「行」「草」の三つのお辞儀を教わります。私もお稽古で三つのお辞儀はどういうものなのかというのは教えていただきました。それでも、知っていることと出来ていることは大違いなのだと思います。

出来るようになるための反復練習

池上英子さんという社会学者が書かれた「美と礼節の絆」という本がとても好きなのですが、それによると、日本の芸能者(※この本では茶の湯も芸能に入ります)たちは一般的に、身ぶり手ぶりの反復練習を通じて、様式化した動作を優雅にやってのけることができる肉体を作ろうとするとのこと。

この説明は胸に落ちました。正しい動作を学んで、反復練習することでしか「出来る」ようにはならないのかもしれません。

お稽古の場ではもちろん普段の生活でも意識して反復練習を心がけたいと思います。

【編集後記】

会社や駅で「新人さん」を見る季節です。彼らのお辞儀はぎこちないこともありますが、習ったことを懸命にやろうとしているのが伝わってきます。その姿勢を見習わなくてはと思います。

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